2015年4月5日に開催されたコスモス勉強会の簡易報告です。(敬称略)
ビーンスタークスノーの水野さん、T&Kの中尾さんから情報提供あり
(1)挨拶・今後の勉強会について(代表:糟谷 政治)
毎年恒例の総義歯合宿が1月10・11・12日に京都で開催されました。加藤先生・黒岩先生の前で参加者全員がプレゼンをするのですが、田中五郎先生は今回、“デンチャースペース義歯を若手の先生方にどのように教えるか?”を発表され、自分の手を動かす・自分で考える事が大切とお話しされました。私達コスモス勉強会も、ただ発表を聞くだけでなく参加者全員が考える、一つの症例を皆さんで検討してディスカッションする会にして行きたいので、今日の参加者を4グループに分けました。
“症例は、舌癌オペ後の患者さん、経管→経口摂取を目指す、口腔乾燥有り、唾液は粘調性、舌は縮こまり口腔外に出ない、上下総義歯で下顎は開口すると浮き上がるという方に、口腔ケア(手技・グッズ)・口腔リハ(手技・グッズ)・義歯改造(開始時期・義歯の何処が悪いか)の検討。
(2)超高齢化社会でこそ求められる口腔ケア ~身体のケアとこころのケア~(目黒 道生)
近年,高齢時代を迎え,認知症の人も増えています。認知症の人は,日常生活に障害があり,その維持あるいは悪化予防を重視した取組みとして生活支援やリハビリとケアを受けています。 言語表現の困難な人,高齢者や日常生活人に障害のある人は,疾患による体調の変化,あるいは急性期病院入院後の療養の場で様々な「苦しみ」「苦痛」を持っています。その苦しみや苦痛をどのように表現しているのでしょうか。言語表現のできない高齢者の苦しみや苦痛を受け取る術を私たちは持っているのでしょうか。
「身体(からだ)にふれる」リハビリやケアは,そのふれる行為によって様々な苦痛を受け取ることができます。そのため,言語表現が困難な高齢者であっても新たな関係性が生まれ関係性の苦しみを和らげることができます。このことは,急性期病院入院後にみられる認知症の人の周辺症状,あるいは高齢者のせん妄に対して看護師,歯科衛生士あるいは療法士が取組むケアやリハビリテーションが「身体のケア」を通じて「こころのケア」となるとこを意味します。ケアやリハビリは,自律性の低下を支援するだけではありません。 今回の講演では、高齢時代の最先端地域の一つである鳥取市での活動を紹介しました。「苦しみ」を緩和するという視点から多職種が連携・分担を進め,超高齢社会における役割を考える参考にして頂ければと思います。
(3)口腔ケアをスタートさせてから4年・・・~そしてコスモスの会に感謝~(可知 久充子)
精神科の病院に「口腔ケア」を本格的にスタートさせて4年。ここまでの経過は決して順調とは言えず、紆余曲折がありました。たとえば現場スタッフと認識の差など、色々な局面にぶつかりながらですが、やるしかないとの思いで進めてきた結果を報告します。
【病院紹介】
病床数605床 職員数440名
精神科、心療内科、神経科、内科、歯科
平均年齢62才(70代以上が200人程度)と高齢化が進む
在日入院日数10年以上の長期入院も・・
【精神科患者の口腔内の特徴】
『セルフケア能力が低い』
- 口腔内環境の劣悪化
- 齲蝕・歯周病・口臭
『精神薬の副作用』(統合失調症・うつ・気分障害)
- 口渇・口腔乾燥
- 嚥下機能の低下
- 感覚鈍麻
【歯科の役割】
週3日の診療 Dr1・DH2・助手1
診療以外は病棟回診、口腔ケアー、OT活動に参加、デイケアにて集団指導、年に数回職員全体に向けた講習会の開催、スタッフ指導、PEG交換前の口腔ケアー、静脈麻酔下での歯科治療など。
また、特徴として入院患者の定期検診を取り入れている。
【経過報告】
口腔ケアーをスタートするきっかけは、セルフケア不足で劣悪な口腔環境をどうにかしたい・・という思いから。そんな中、コスモスの会との出会いがあり、白梅ケアーホームを見学したことが私たちの原点だった。
そして、精神科病棟で口腔ケアーがスタートしかものの現場スタッフの厳しい声に直面!
どうするか???
職員の口腔ケアーに対する認識を統一させる為に
- 全職員対象の講習会
- スタッフの実技指導
等、積極的に頑張ってみたものの、温度差が埋まらない・・
何故ならば、精神科の口腔ケアーは他科に比べて重要度の認識が低いから。
そこで看護部との連携を図るため、2013年7月、看護師、介護士、歯科スタッフからなる口腔ケアーチームを立ち上げた。
まずはチームとしての目標を立てて気持ちを一つにし、認識調査などを行い何が足りないのか?何をしていくべきなのか?など、歯科目線ではなく現場の声を中心にケアー改善のため動き出した。
- 職員対象の実技指導
- 患者対象のOT活動
- 各病棟委員が職員・患者に働きかける
- アセスメントシート作成
認識調査の結果を開始前と1年後とで比較検討してみた。
従来のアセスメントシートを改良して、病院統一シートが完成(全入院患者対象)。カルテにも組み込まれ、職員の間にもケアーの重要性が認識された。
チームを立ち上げた結果、大きな変化としては、
- ケアーグッズの販売個数(例:2013年モアブラシ450本)がかなり増えた
- そして2013、2014年と肺炎発症人数が月平均4人とケアーの成果が現れる数値となった。
病院全体に口腔ケアーの重要性、認識が高まったことから、「口腔ケアーチーム」を「口腔ケアー摂食嚥下委員会」に改名し、次のステップに向けて動きだすこととなった。
最後に糟谷先生をはじめ、コスモスの会の皆さんのお陰でここまで来ることができました。本当に有難うございました。
今後は次の目標に向かい精進していきます。
(4)下顎義歯に於ける咬合高径推察法の現時点での検証結果 (糟谷 勇武)
総義歯症例において「上顎前歯部の長さ22mm」「下顎前歯部の長さ18mm」「上下合わせて40mm」という平均値指標が存在するが、平均値を大きく逸脱した顎骨の大きさの場合の対処法をレトロモラーパッド間距離から推測する方法を検討・実証している途中経過を報告した。
*参加者からの感想
(1)
- グループでの意見交換はネットワークも広がり、それぞの立場でのアセスメントがあって勉強になりました。
- 症例検討は様々な意見を聴くことができて大変勉強になりました。電動T字棒の嚥下反応への効果など実践してみようと思います。
- 症例検討が、おもしろかったです。他の方の考えや視点が聞け勉強になりました。
- グループディスカッションはとても勉強になりました。色々な目で見ると、見える角度が広がって来ます。
- 症例検討は、グループの人の声も聞こえにくいくらいイロイロな意見がでていて、気付かされたこと、参考にさせてもらえそうなことがありました。
- 皆さんの前だと発言を迷ってしまいますが、小グループだと意見が言い易く、受け身なだけの勉強会ではないのが良かったです。
(2)
- 目黒先生のスピリチュアルペイン、大切な視点だと思いました。
- 目黒先生の話、今まで聴いた事がない話でとても興味深い内容でした。
(3)
- 可知病院のDHと介護士さんの話しで、素人の見落としやすいところ指摘して、既設の病院全体が変わってくるとても素晴らしい話でした。
- 可知記念病院の事例は、どこの病院でもあることですが、病院全体に口腔ケアの意識を普及させる難しさを再認識しました。ただ、逆に定着させてしまえばメリットも大きく院長や看護部にも評価されていたのは素晴らしかったです。
(4)
- 勇武先生の云う、レトロモーラーパッド間距離による咬合高径の適正値予測は非常に関心を持って伺いました。またあらためてX-1194という模型を見ました。
- 勇武先生の研究、いつも面白いですね。柔軟な発想と展開が素晴らしいです。
次回は7月12日(日)午前9時半~ 白梅ケアホーム家族介護教室にて開催を予定しております。