2014年7月27日に開催されたコスモス勉強会の簡易報告です。(敬称略)
[協賛]ビーンスタークスノーの水野さん、T&Kの中尾さんから情報提供
ウェルテックからもサンプル提供
挨拶と報告(代表:糟谷政治)
前回(3月)開催からの出来事について
- 黒岩恭子先生のくるリーナシリーズについて週刊ポスト(4月25日号)に掲載された件
- 第1回加藤塾実技セミナーが4月に開催、コスモスのメンバーが受講
- 4年前のNHK「おはよう日本」を観た方から電話アリ、24年前パーキンソン病を発症した母親を連れて焼津市から受診される。口腔リハと義歯改造で対応
- グループホームと在宅訪問の症例報告
- 第2回加藤塾実技セミナーが5月に開催、受講した梅ケ枝シスターズがトップの成績
- 6月東京両国で黒岩先生の講演を受講した。
黒岩口腔リハグッズのT字棒の症例報告(石井静香) - 35年続けている幼稚園での親子染め出し実習と検診について
- 灯光園症例その後の報告
- 診療室での患者さん(口腔心身症・身体表現性障害)の症例報告
本『OFPを知る』の紹介 - 義歯、“機能するものは普遍的な形がある“について
当院の摂食嚥下障害者への取り組みについて
(袋井みつかわ病院S・T佐野真紀子)
当院は医療保険病棟と介護保険病棟をあわせて260床を有する介護療養型医療施設です。
リハビリは、PT:7名、OT:6名、ST:5名 が病棟担当制をとり、病棟を拠点とした生活リハビリテーションを展開しています。当院のような療養型病院は生活が中心で、リハビリは生活の中で患者様の残存能力をいかし、心身機能の維持向上をはかる方針でやっています。主として歩行・排泄・食事など、具体的な生活動作ができることを目標に生活リハビリを行っています。
なかでも食べることは生活のなかで重要と考え、摂食・嚥下リハビリを行なっています。摂食・嚥下リハビリでは、嚥下スクリーニング検査、VF(嚥下造影検査)、 VE(嚥下内視鏡検査)等により、患者様の嚥下機能を評価します。そしてそれぞれの機能に合わせた代償法を行いながら段階的嚥下訓練を行っていきます。チームアプローチも重要と考え、経口摂取を目標にドクター・Ns・DH・栄養士・リハビリ・病棟スタッフが関わっています。 口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防や食べる口を作るため病棟スタッフが行っています。
この中で、経管栄養から経口摂取に至った症例を紹介致します。68歳の女性で、前院では経口摂不可と判断された方で、1年間リハビリ介入なし、ベッド中心の生活で車椅子離床殆どなかった様子でした。当院に転院した直後はボーッとしており、声掛けに対して目を開ける程度でありました。しかし入院当初から摂食・嚥下訓練を行い、病棟では離床を3回、PT・OTの訓練も実施した結果、1か月後にはおやつ病棟に申し送り、1食経口摂取から開始し、嚥下食、全粥ミキサー、座位にて自力摂取出来るようになりました。さらに入院2か月には全粥ソフト食、3か月には常食一口大が摂取できるようになりました。
これは、口腔ケアで誤嚥性肺炎の予防、食べる口づくりをし、個別リハビリでは廃用症候群の改善、生活リハビリではできる生活動作で心身機能の維持、栄養管理も行い、また適切な嚥下機能の評価をし、機能に合わせた代償法の使用、段階的嚥下訓練を実施したことによるものと考えられます。このように嚥下訓練でトータルアプローチを行ったことが経管栄養から経口摂取に回復できた大きな要因です。
高齢者は栄養障害、廃用症候群、加齢により筋肉量の減少や筋委縮、筋力低下が起こり、口腔機能低下 嚥下機能の低下も起こるといわれています。以下にアプローチ方法をまとめてみました。
摂食嚥下障害者へのアプローチ
- 栄養障害アプローチ
嚥下機能に合わせた食形態を把握し、栄養指導をする
十分な栄養・水分を補給することも必要
栄養補助食品をうまく活用する - 廃用症候群へのアプローチ
本人に可能なADLを設定し、訪問リハ介入し活動量増やす - 嚥下機能アプローチ
嚥下レベル:咀嚼嚥下は困難
丸飲みできる食形態を選択する - 誤嚥性肺炎の予防(口腔ケア)
- 食べる口づくり
口腔リハ、義歯作成・調節
以上のようなトータルアプローチが重要であります。
これは療養型病院に入院される患者様だけでなく在宅の患者様も同じです。
まずは、十分な栄養を摂り、寝たきりにならない元気な体をつくりましょう。
歯周病について(おとがい歯科 山崎大士)
【歯周病の病態について】
細菌は主に嫌気性菌による感染症。主に歯周ポケットと根管内を経由して根尖部に炎症巣を形成する。
今回は、主に歯周ポケットからの感染(辺縁性歯周炎)について説明します。
【診断について】
辺縁性歯周炎には、大きく分けて慢性歯周炎と侵襲性歯周炎があります。臨床的な特徴としては、慢性歯周炎は40前後から発症し進行は緩慢。侵襲性歯周炎は、発症が35歳以下で、進行は急速。また、慢性歯周炎は環境的要因(プラーク・喫煙など)がより強く関連するが、侵襲性歯周炎は遺伝的要因がより強く影響すると考えられています。
【局所要因について】
歯周炎の局所的な進行には、細菌感染だけでなく、局所的増悪因子が関与します。局所的増悪因子としては、食片圧入、コンタクト不良、歯列不正、歯根形態などがあります。
【歯周治療について】
治療としては、初期治療(Sc・TBI・SRP・局所的増悪因子の除去)と歯周外科処置があります。歯周外科処置は、直視下で確認できますので、確実な除石や掻爬、骨形態の修正ができます。歯周再生療法としては、骨充填法と組織再生誘導法があります。また、治療後のSPTは歯周病の再発を防ぐために大事です。
【症例】
症例①(慢性歯周炎の一例)
49歳女性、主訴:前歯の歯肉退縮、全身疾患なし。左上23間、56間のコンタクト不良が原因で進行した慢性歯周炎。歯周外科処置(自家骨移植)を含む歯周治療の結果、良好な結果を得た。
症例②(侵襲性歯周炎の一例)
35歳女性、主訴:歯茎の腫れが良くならない。全身疾患なし。全顎的に骨吸収が重度、局所的に根尖に及ぶ骨吸収あり。広汎型侵襲性歯周炎。全顎的な歯周外科を含む歯周治療を行っている。患者が妊娠したため積極的な処置は中断し生活環境を含めた治療内容の変更が必要。侵襲性歯周炎は早期の徹底的歯周治療が必要。
症例③(周術期関連の慢性歯周炎)
70歳男性、右上7痛い。境界型の糖尿病。右上7根尖まで骨吸収が進行しているが、患者の希望で、投薬と咬合調整で対応。SPTを行っていた。しかし、胃がんになったため、化学療法時の急性化等を考慮して、右上7抜歯。患者は癌治療の方に専念。
以上のように歯周病の特徴や患者の全身疾患、生活環境に合わせた歯周病治療が必要である。
最近話題の3Dプリンタと歯科との関わり(糟谷勇武)
今回も患者情報等含まない内容なので、PDFファイルにしてあります。
参加者からの感想
- 「政治先生の症例発表はいつもその変化に驚きます」
- 「政治先生のスライドで久しぶりに確りした義歯を目にしました。当院の研修医の義歯は小さくて安定しません。」
- 「みつかわHPの発表びっくりでした。4年もリハなしだなんてそんなところに受診したくないです。ブランクがあっても人間の能力は天井がありません。返す返すももっと早くリハ介入があったらと思うばかりです。」
- 「STさんの講義、参考になりました。全身のリハと嚥下訓練と同時にできる環境はすばらしいと思いますが、病院や施設によって差があるのは悲しいですね。」
- 「STの先生の話しは、経口可能になったことをもっとSTからの視点で聴きたかったです。」
- 「久しぶりに歯周病のお話を聞きました。」
- 「 歯周病の話は興味津々です。ぺリオの話は、こういう機会を与えていただけなければ勉強しないなぁと思いました。」
- 「山崎先生の歯周病はしばらく歯周病の勉強をしていなかったので今日、参加できてよかった、と思いました。」
- 「勇武先生の3Dプリンタのお話面白かったです。3Dプリンタは足していく技術なんですね。」
- 「勇武先生の3Dの説明の中で、カム練習するシートは、凹凸面は剥がれることがないんだということがわかりました。」
- 「勇武先生の講義、どんどん面白くなっていきますね。人をひきつける力がパワーアップされ笑いもとれますね。」
- 「今回3Dプリンタの話等興味深い話が多く勉強になりました。」
- 「3Dプリントのお話はとても興味深く、今後の歯科業界に希望を感じました。」
- 「勇武先生の話しは、今日も楽しかったです。アナログ人間の私にとって目からウロコです。」
次回の勉強会予定は未定です。