2014年11月16日に開催されたコスモス勉強会の簡易報告です。(敬称略)
ビーンスタークスノーの水野さん、T&Kの中尾さんから情報提供あり
(1) 報告(代表:糟谷政治)
前回勉強会(7月)からの出来事
- 白梅ケアホームで私と勇武先生が講演、“義歯と口腔ケア(リハ)
- 8月末に加藤塾総義歯研究会が開催され、メンバーの矢部先生による発表を後ほど話して頂きます。
- 前回の勉強会で“NHKがまだ続いている”という焼津からのケースを紹介しましたが、今回は埼玉に住む娘さんが大倉市(愛知県)の母親を診療室に連れて来られ対応しました。その後も、東村山市や川越市からも問い合わせがあり、加藤先生に電話するよう伝えました。
- 9月10日、左官さんに静岡歯科衛生士専門学校での講義を行いました。
- 9月26日・27日、秋田県湯沢市で加藤塾が開催されました。
参加者は・糟谷勇武・鈴木邦治・梅ケ枝裕子・矢部晶子・藤木悦子・鈴木伊予子・左官美穂・石井静香・柳林愛・竹下紀子・松本香。
来年度は和歌山で平成27年10月31日・11月1日の予定 - 西田先生が東名で大事項に遭遇し車が横転!しかし身体は全く大丈夫でした。私も先日東名で落下物と衝突し、破損したのは車だけで済みました。皆さんも年末年始、車には充分気をつけて下さい。
(2)地域包括ケアシステムを知ろう(内藤早穂)
8年前に地域包括支援センターが出来ました。包括とは、引っ括めて一つに纏める事。従って「地域包括ケアシステムとは、地域ぐるみで介護や看護を一つに纏めて受ける事が出来る仕組みです。
「2025年問題」というのは、団塊の世代(1947年~1949年生まれの3年間)は800万人居り、2025年に全員が75歳以上の後期高齢者になるという大変な事態のこと。それが地域包括ケアシステムを作る必要の背景になっています。この団塊の世代のケアのニーズは今よりも増える可能性が有ります。現在の調査では、単独所帯が増えて“在宅での最後が希望だが子供達に面倒見て欲しくない、施設入居を望む”という人や“認知症の高齢者”も増大が予想されます。
2年前の平成24年に「地域包括ケアシステム」の概念が出されました。2025年問題に対して色々な地域(例えば都会・田舎・過疎地)があり、その地域の特性や高齢者の状況に応じて地域毎でシステムを構築して対応を考えて貰おうという意図で厚労省から各地域に通達が届いています。その厚労省のHPに掲載されている図は、真ん中に住まい(暮らし)が有り、周りに医療・介護や生活支援や病気を予防するためのもの、見守りをしてくれる自治会やボランティアなどがあり、それをコーディネートしてくれるのが地域包括支援センター・ケアマネジャーです。このサークルの中は30分以内で必要なサービスが受けられるというのが厚労省の定義になっており、ニーズに応じた住宅が提供されることが基本で、健康上の安全・安心な生活を確保するために、医療・介護が予防のみならず福祉サービスを含めた様々な生活支援が日常的に出来る地域での体制を整える事を厚労省は望んでいることになります。
さて、ケアマネジャーに求められる4つのヘルプ、これを今日皆さんに覚えて戴きたいと私は思っています。自助・互助・共助・公助 といって、自助(人に頼らず自分の事を確立する)・互助(インフォーマルな相互補助、近隣の助け合いやボランティアや自治会などでお金を使わずに皆さん方の気持ちで助けて戴く)・共助(介護保険・医療保険など)・公助(社会福祉公助)などです。
従来の社会保障では互助の部分が抜けており、国の財政難で国も地方も、お金を使わない互助を推し進めたいので、最近ケアマネジャーは互助の所を確りクライアントに聞くようになりました。
さて、今後地域包括ケアシステムを実現するためにはセルフケアが充実している事が1番ですが、この地域包括ケアシステムの問題点が沢山あります。そのうちのいくつかをお話します。
まず連携すると言っても結びつきが漠然としていて少しも連携が取れていません。個人情報保護法があり、現在の困っている生活状況の情報が私に届いても、法律のために情報交換が出来ない場合も有ります。今自分が抱えている認知症の家族の事を近隣の人達にお願いしたりして助かっていますが、この互助をお上が勧めているのは財政難のためなので、本当に困っている人達への社会保障が薄くなってしまうのではと危惧しており、また核家族が進んで近隣との関係が薄れているのが現状なので互助を推し進めるのが困難です。行政がボランティア普及のためのポイント制度などを考えてはいますが、ボランティアとか民生委員を機能させ育てる所が有りません。
次に地域包括ケアシステムの真ん中に有る住まい、建物が今沢山出来て きていますが、働き手が少ないです。3Kの仕事と言われる介護士さんの報酬が少なく、特に男性が家族を養っていける状況ではなく離職率は本当に高いのが現状です。それから今勤務する老健施設は本来在宅へ帰るための支援の施設でしたが、今は看取りまで考慮した場所になっており、これで本当に良いのかと考えてしまいます。
今回お話する事で、初めて浜松市のホームページを観てみました。そこに書かれている地域包括ケアシステムの平成26年から30年までの大きな目標は“みんなが生き生き関わりを持って動く地域づくり”と書かれていました。
今日を機会に皆さんが周りの人達に目を向けたり、今日勉強会に参加している皆も地域包括ケアシステムの一員である事を自覚して戴きたいと思います。
(3) 勿体ないデンチャーとその後(矢部晶子)
第4回加藤塾総義歯研究会で発表した内容とその後をお話したいと思います。
92歳の女性。噛むと痛いということで義歯の作製希望。施設から娘さんが車椅子診療室に連れて4回来院。3月に上下総義歯を完成しました。
その後はこちらから施設へ月に1回訪問する時に義歯調整する事になりました。4月訪問時は上顎の義歯が痛いということで調整、5月に訪問したら、余り使っていないということで本人に聞いてみたら「入れてもイイんだけど、勿体ない。今使っているのが壊れたら入れる。」と言われた。6月も殆ど使ってなくて、聞くと「勿体ない」と言われ、こちらからは本人の希望通りにと伝えました。7月は訪問がなく、8月の訪問時には、全く使ってないわけではなく、時々は入れるけど勿体ないとの事でした。
8月の総義歯研究会では、使ってもらえない義歯の演題で発表しましたが、三木先生から、勿体ない義歯と命名されました。研究会後、糟谷先生から「上顎は落ちない、下顎は浮かない程度に、一回りでなく二回り位削って、患者さん自身が無理なく装着出来るように小さくすると、使ってみよう義歯になると思います」とメールを頂き、総義歯研究会でも「大きすぎるよ」とも言われていたので、対応しようと思いました。9月に訪問して削除し、私の気持ちの中では、これは二回り削除したと思っていましたが、実は僅かでした。
10月には床縁だけでなく床の厚みも削除したところ、テストフードも痛くなく昼食も無理なく食べられました。10月末にD・Hから、「また旧義歯を使用しています」 「全く新義歯を嫌っているわけでなく、新旧義歯を並べて、どちらを使おうかと考えている」というメールが有りました。今月(11月)9日に訪問した時にも上下義歯を削除し、その時のテストフードも痛くなく食べて戴き、昼食・夕食も新義歯で痛くなく食べられましたが、旧義歯は懐に入れて大事に持っています。
作製した”使って貰えない義歯”が”勿体ない義歯”となり、”使ってみよう義歯”へ成長したことを報告しました。
(4) 私と白梅(糟谷政治)
今回発表のエントリーが少なく、私が発表します。
私と白梅が関わる前、平成5年・6年に、厚労省は在宅歯科訪問を勧めて日本各地に補助を出すことが決まり、浜松市も浜松歯科医師会と訪問歯科事業を開始し、私はその実行委員長を勤めました。歯科医師が訪問治療後、保健師(当時は保健婦)が在宅を訪問して聞き取り調査を実施し、90%近くの高評価を得ました。在宅の大体の状況は理解したので、老人施設ではどんな状況なのか興味を持ち、患者さんである保健師さんにお話したところ、この白梅ケアホームを紹介されました。
1995年8月白梅を訪ね、施設内での治療をしたいと申し入れしたところ好感触では無かったのですが、副理事長さんから「1年前に先生の在宅訪問の話を聞きました。煎餅食べさせたりしたスライド面白かった」と言われ、全くのボランティアで9月から訪問歯科治療を始め、毎週日曜日訪問して現在と同じように義歯改造治療を行いました。一ヶ月経った日曜日に訪問したら施設の役員が待っていて、「入れ歯を直すと食べられるようになるんですね。先生、これからず~っと来て戴けませんか?」と言われ、私は「私だけでなく、歯科衛生士を訪問させて口腔ケアを行いたい」と答えたところ、「先生の好きなようにやって下さい」との事で、訪問での歯科治療と口腔ケアが県西部で初めて実施されることになりました。
当時は口腔ケアという言葉はポピュラーでなく、1997年地元の新聞に取り上げられたときは、口腔ケアをしているのに“歯磨き指導”という言葉でした。米山先生の論文がランセットに掲載された後は医科・歯科・看護の世界では口腔ケアという言葉は知られるようになっていましたが、一般的にはなっていませんでした。私は施設内での講演はしましたが、大変な業務をされている看護師・介護士に「口腔ケアをして下さい」とのお願いは一切してこなかったのですが、施設を利用している要介護高齢者の事を考え、訪問する歯科衛生士に聞いたりしながら、自然に施設内で口腔ケアが行われるようになりました。当時痴呆と呼ばれた認知症の方も自然に食後の歯ブラシをしている動画をお見せします。このように口腔ケアのパイオニアである白梅ケアホームは今後、口腔ケアから口腔リハビリ・咽頭ケアへと進歩して欲しいと願っており、この思いは白梅ケアホームの職員へ伝えました。
さて、話は変わって、今年の加藤塾湯沢大会では黒岩先生の咽頭ケアを米子の足立先生が分かりやすく説明しました。改めて紹介します。
咽頭ケアの臨床的意義
- 熱が下がる
- 呼吸が正常になる
- 吸引回数が減る
- 覚醒が起きる
- 飲食が可能になる
- 発声が促せる
- 口臭が無くなる
- 口腔乾燥が減少する
咽頭ケアの方法
- まず鼻腔ケアを行う
- 口腔ケア(保湿材を使用して口腔内を湿潤させる)
- 全ての唾液腺を刺激して唾液分泌を促す(綺麗な漿液性の唾液分泌を促す、舌下部や奥舌への刺激は咽頭機能にも繋げられる)
- 唾液だけでなく保湿材を併用して、上咽頭・中咽頭・下咽頭へと順番に湿潤させていき、自己喀出を待つ(反応には個人差がある。)
次回の勉強会開催は来年4月第1日曜日を予定しています。